ささ読み小説 第8弾 「元の世界へ連れ出してくれたのは君だった」

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こんにちは
ささっと読める小説「ささ読み小説」第8弾です。

【元の世界へ連れ出してくれたのは君だった】

「今日は天気が良いね」
「そうだね」
「なんか飲み物とか買ってこようか?」
「あぁ、俺買ってくるよ」
「良いよ、良いよ、私買ってくる」

僕はこの夏から白い壁に囲まれた空間にいる。
ついこの間までは大学に通い、友達と笑い合い、就職活動とかについて話をしていた。ただ、ある日体調が優れないという理由でこの白い壁に囲まれた施設に来てから、僕はこっちで過ごすことになった。

いつまで過ごすかはわからない。
もしかしたらもうここを出ることはないかもしれない。

僕には彼女がいる。
同じ大学の3年生。僕らは共通の友達の紹介で出会った。
一目惚れだった。彼女は常に笑顔でだった気がする。
彼女の笑顔を見るたび、僕は温かい気持ちに包まれるように感じた。
僕らは出かけることが好きで、近々地元を出て少し遠くまで旅行に行こうと話をしていた矢先に僕はここで過ごすことになった。

それからだった。
彼女が僕の前で見せる笑顔がぎこちなく見えるようになった。
彼女と出かけることも禁止された。
この施設から出ることさえ禁止された。
僕の世界は突然、この施設の中だけになった。
まるで彼女は別の世界に住む人で、時々僕の住む世界に来ているように感じる。

彼女は外で笑っているのだろうか。
彼女は外の世界で何をしているのだろうか。
外の世界にいる友達の話は彼女が報告してくれるが、前はイメージできていたのに、段々イメージができなくなっていた。
時々、外の世界の話を聞くことが辛くなった。
彼女はそのことを理解したのか、段々外の世界の話をすることが少なくなった。

僕はこのまま彼女といて良いのだろうか。
彼女を僕と同じ世界に留めて良いのだろうか。

時々そんなことを考える。

それから1年半が経った。
僕は幸い外の世界に戻ることができ、無事に就職をした。
外の世界に戻ることができたのは飛び上がるほど嬉しかった。
もう戻れないかもしれないとさえ思っていたのが、嘘のように感じた。
嬉しさと同時に涙が溢れてきたのは、彼女の笑顔が元に戻った瞬間だった。
彼女は諦めなかった。僕の側を離れなかった。
彼女が外の世界へ連れ戻してくれたとさえ思う。
外の世界へ出られると分かった瞬間、僕は彼女にすぐ連絡した。
彼女はすぐに僕の元へ来て、涙しながら喜んでくれた。
僕以上に喜んでくれた。

そして外に出てから3年が過ぎた。
彼女は奥さんになった。今は毎日一緒に過ごしている。
こんなにも幸せな世界があることを僕は知った。
家のドアを開けて奥さんが迎えてれるこの空間が
今は一番幸せな世界だ。

【こんな感じで】

病気で入院をしてしまった主人公の彼女に対する思いを描きました。
突然住む世界が変わったような心境。私も入院したことがあるので、その経験も参考に書きました。

読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

 

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