ささ読み小説 第27弾 「自分が嫌い、抜け出したい」

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こんにちは
シンディーです。
ささっと読める小説「ささ読み小説」第27弾です。

※音声で聞かれたい方は下までスクロールしてください。

自分が嫌い、抜け出したい

流れが変わったのはあの時からだ
社会人2年目の時、僕は人生のどん底にいた。
別に大きな借金を沢山抱えていたとか、命に関わる病気になったとかでもない
何が起きたのか、それは

「自分のことが本当に嫌いになったんだ」

何をやるにも良いイメージができなくなった。
仕事はもちろん、人間関係も上手くいかなくなった。
驚いたのは、どんな悪いことが起きるのかが予知できるようになった。
予知が当たる時は必ず前兆があった。

グラスにヒビが入っていることに気がついたり、石につまずいたり、何かを失くしたり。
そんなことが起きてしばらくすると、必ず悪いことが起きた。

でも、一つだけ良いことがあった。
それは、サチに会ったことだ。

僕はコンビニでお茶を買った。
レジで会計を済ませると、コンビニの前から動けなくなった。
そしていつの間にかお茶を飲み干していた。
「シュンくん?」
僕と同じ名前の人が近くにいて、声をかけられていると思った。
「シュンくんじゃない?」
目の前にスーツを着た同年代ぐらいの女の子が僕の顔の前に手をかざして左右に動かした。
僕は合っていなかった焦点を女の子の顔に合わせた。
そこには見覚えのある顔があった。
「サチ?」
そこに立っていたのは幼馴染のサチだった。
昔から隣同士の家で育ち、幼稚園、小学校、中学校、高校とずっと一緒にいた。
大学は別々になったが、しばらくは連絡を取っていた。
だが、突然サチからの連絡が途絶えた。
「やっぱりシュンくんだ。久しぶりだね」
サチは昔のイメージから随分大人の女性になっていた。
当たり前か、連絡を取っていたのは5年前だ。
サチの顔が見えた時、
急に胸が握りつぶされているような苦しみと悲しみが襲いかかってきた。
そして目から涙が溢れてきた。
「シュンくん大丈夫?」
サチはそう言いながら慌てた様子で僕の背中に手を置いた。
僕は訳も分からずしばらく泣き続けた。

サチは僕のことを気遣ってか、僕の体に手を添えて場所を移動した。
そして人気が少ない川沿いのベンチに僕を座らせて、近くの自販機でコーヒーを買ってきてくれた。
そして僕はサチの優しい表情を見て、また泣き続けた。
サチはその間、背中をさすってくれていた。
僕はサチに何度も謝った。サチは「大丈夫」だけ繰り返し言ってくれた。
僕はサチに会っていなかった間に起こったことを大まかに話した。
全く好きでもない会社と仕事で大きなミスをして、そこから自信を失い、友人に乱暴な態度をとり
どんどん大切なものを失って一人ぼっちになったこと。
溢れ出てきた感情もすべて話をした。
サチはずっと僕の話を聞き、繰り返し頷いてくれた。
すべてを話し終えるとサチが話始めた。

急に連絡が取れなくなったのは、サチは大学の友人関係で苦しみ
今の僕のように自分に自信を失くし、いろんなことが嫌になって誰とも連絡を取らなくなったそうだ。
自分を嫌いになって、どん底にいたが、あるキッカケで立ち直り今はとても楽しく毎日を過ごせているらしい。

「シュンくんの気持ちが凄くわかる。私も全く同じだった。」
サチは昔の自分を思い出しているんだろう。遠くを見ながらゆっくり話した。
「でも、ある人から手紙をもらったの。今も持ち歩いてるんだけど」
サチは何度も読み込んだであろうボロボロになった手紙を手帳から取り出して読ませてくれた。
そこに書いてあったのは

「サチさんへ」
そんなに自分が何もできない人だと思えば、あなた自身が期待に応えてくれないよ。

あなたがこれから何をするにしても、何を考えるにしても、決めるのはあなた自身でしょ?
あなたがあなた自身をバカにしたり、不満に思ったりすれば、あなた自身はあなたからそっぽを向いてしまう。
あなた自身を一番応援してあげられるのは、他でもないあなたでしょ?

自分に期待しなくなれば、期待しない考えや行動を始める。
そんな自分を信じない考えや行動をしていけば、結果は良いものになるはずがない。
他の人が何を言っても、何を考えても、あなただけはあなたを信じていかないと、
あなたにとって良いことなんて起こるはずがないでしょ?

苦しい、辛い、こんな自分を変えたい。
そう一番思うのはあなたでしょ?
じゃあ、まずは自分を信じて、できることから始めてみなさい。
私があなたの側で見ていた時は、素晴らしい可能性を秘めた子。
この子はきっと負けない。きっと何か素晴らしいことを成し遂げるわ。
そう何度も思った。そう思わせてくれたのはあなたなのよ。
大丈夫よ。あなたが思っている100倍はできるから。
あなたは自分自身のことを勘違いしてる。
あなたは自分自身のことを分かってない。
自信を持って、前だけ見て進みなさい。

竹下 弓

この手紙はサチの高校の担任の先生と社会人になって偶然出会ってから、しばらくして家に届いたらしい。
そしてサチは手紙を毎日毎日読んで、泣いて、先生の言う通りにしてみたことを僕に話してくれた。
手紙に書いてあることを実践するのに3ヶ月ぐらいかかったが、だんだんサチ自身に起こることが変わっていき、
悪いこと以上に良いことが沢山起こり始めたと言っていた。
それからも何度も先生の手紙を読み返し、自分に言い聞かせて考えては行動を繰り返しているらしい。
そして僕に会った日の朝も読み返したそうだ。

それから僕はサチと連絡先を交換して家に帰った。
しばらくぼーっとしていたが、なんだか背中にのしかかったような重さは感じなかった。
これでもかと言うくらい泣いたからかもしれない。
するとサチから写真が送られてきた。
それはサチが担任の先生にもらった手紙の写真だった。

「シュンくんを信じられるのはシュンくんだけ。大丈夫。きっと色んなことができるから」

こんなメッセージも添えてあった。
僕は久しぶりに笑った気がした。

「信じてみるか。」

僕は部屋の中でそう呟くと散らかった部屋を片付け始めた。

いかがだったでしょうか?

自分を信じられなくなった主人公シュンが幼馴染の出会いをきっかけにもう一度歩き出そうとするまでを描きました。サチに出会えたのも、主人公のシュンが求めていたからでしょう。
完全に諦めることができない部分があり、その思いがサチをシュンに出会わせたのかもしれません。

音声で聞かれたい方はこちら↓

読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

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