ささ読み小説 第26弾 「旅立ちの日に、別れと出会い」

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こんにちは
シンディーです。
ささっと読める小説「ささ読み小説」第26弾です。

【旅立ちの日に、別れと出会い】

新しいことをしようとする時
新しい場所に行く時
新しい仕事をする時
楽しみや喜びを感じる人もいれば、不安や恐怖を感じる人もいる。
私はどちらかというと不安や恐怖を感じてしまうタイプだ。

「どうしていつも不安や恐怖を感じてしまうんだろう」

僕は公園のベンチに座りため息をついた。
僕は1週間後に今まで住み慣れた場所を離れ、誰も知り合いのいない誰も僕のことを知らない場所に行く。転勤は突然告げられた。
結婚しているわけでもないから家族と離れ離れになるなんて思わない。
友達もほとんどいないので、あいつと離れてしまうなんてやつはいない。
恋人もいない。

「座っても良いかしら?」
突然声をかけられた。そこには60代後半ぐらいのおばあさんが僕を見下ろしていた。
「どうぞ」
僕はそう言いながら、座っている位置をずらしておばあさんが座れる空間を作った。
雪のような色の髪の毛をしたおばあちゃんの顔には、今まで数え切れないほどの表情を積み重ねたであろうシワが入っている。「ありがとう」と言いながらゆっくりと僕の隣に座るおばあさん。特に何かをするわけでもなく、どこかを眺めている。
「良い天気ね」
おばあちゃんは目を合わせることもなく、僕に話しかけてきた。
「そうですね」
僕はそう答えながら無理やり笑顔を作った。おばあさんはこっちを見てないのに笑顔を作る。長年染み付いた機械のような笑顔だ。
「私ね、昨日夫を亡くしてしまったのよ」
おばあちゃんは世間話のようにそんなことを話しだした。
「それで、今日は私の夫が好きだった公園にきたの」
「そうなんですね。」
僕は突然のことでどう表情を作って良いか、どう反応して良いかわからなく、ぎこちなかった。
「夫がね、いつも口癖のように言っていたのよ」
おばあさんは僕の反応は気にしていないようだ。
「今日は何をする?と夫が毎日のように聞いてくるの。私がいつもと同じ、平凡な毎日を過ごせたら良いって答えるの。そしたら夫は言うのよ。」
おばあさんは思い出すように話し続ける。
「毎日やったことがないこと、経験したことがないことをしなくて、どうやってこの広い世界の楽しさや喜びを見つけられるんだって」
そう言うおばあさんの微笑みに僕は気がついた。
「そう言うと、行くぞ!と言って強引に私を連れ出して出かけるの」

「行動的だったんですね。」
僕は当たり障りのないことを言った。

「そんなこともないのよ。いざ山登りだ!とかいざ旅行だ!とか言って出かけるんだど、すぐ疲れちゃうの。」
そう言っておばあちゃんは声を出して笑った。
「でもね、とても嬉しそうで楽しそうだったわ。」
おばあさんの表情が和らぐのがわかった。
「そしてその日の寝る前に必ず言うの。今日も幸せだったなって。」
「いつも強引だったわ。でも、私はそんな夫といる日々がとても幸せで楽しかった。」

おばあさんの話をいつの間にか真剣に聞いていた。
この人はきっと本当に旦那さんを愛していて、そして幸せな夫婦生活を送っていたんだろうなと思った。
いや、表面には見えない苦労もあったのかもしれない。でも、僕もいつかはこうやって語ることができる人と出会い、そんな人生を歩みたいと憧れを感じた。

「僕もこの広い世界の楽しさや喜びを見つけたくなってきました。」
僕がそう言うとおばあさんが初めて僕の顔をしっかりと見た。
「新しい世界を見つけりると、沢山の楽しみは見つけるわ。怖いのは踏み出すときだけよ。」
最愛の人を亡くした人から勇気づけられるなんて、立場が逆転していることなんてその時僕は気にもしていなかった。

【こんな感じで】

新しいことを始める時は本当に不安や恐怖が大きいですよね。でも、せっかくなら楽しみや喜びを見つけることとしてワクワクして始めたいです。
ここで出てきたおばあさんの旦那さんのように「行くぞ!」と声を出して一歩踏み出して行きましょう。

読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

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