ささ読み小説 第2弾「偶然の出会い」

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こんにちは
ささっと読める小説「ささ読み小説」第2弾です。

※音声で聞かれたい方は下の方へスクロールしてください。

【偶然の出会い】

今日は日曜日だ。
平日の仕事から一時的に開放された日。
開放されたと言っても起きたら頃には後半日しか残っていない。
また寝すぎた。早く起きる気がないだけか。
窓の外から入る暑い日差しに無理やり起こされた。
重たい体を起こすと洗面所で顔を洗い、身支度をして外に出た。

今日は何も予定は入れていない。
休みの日にずっと家にいるのが嫌なだけだ。
風はあまりなく、既に体が汗ばみ始める。
世の中は夏休みか。そんなことをこの2週間何度もつぶやいた。
地元のコンビニに行き、涼むついでに雑誌を手に取る。
夏休みのコンビニはなんて心地が良い休憩所なんだろうか。
そんなことを考えながら適当な雑誌を読む。

「あら、また会ったわね」

振り返ると、そこには60歳ぐらいのおばあちゃんが立っていた。
確か先週の日曜日もこのコンビニで会った。
初めて会ったのも立ち読みをしている時だった。
その時は確か、「孫に頼まれた雑誌がどれか分からないから教えてくれ」と声をかけられたんだ。

「あっ、どうも、今日も雑誌買いに来たんですか?」
僕は雑誌を置いておばあちゃんの方へ体を向けた。
「そうなのよ、今日はこの雑誌を頼まれたの」
そう言いながら手書きのメモを僕に見せた。
その孫とやらも毎回こんなおばあちゃんに頼まずに自分で買いに来いよと思った。
どんな怠け者なんだと思った。
「これですよ」
僕はメモに書いてあった雑誌を手に取り渡してあげた。
「ありがとう。助かるわ。間違えて買うとね、すっごく怒られてしまうの」
だから、ここの定員さんにもよく聞いてるわ。
「そうなんですね、お役に立てて良かったです」
そう言うとおばあちゃんは会釈をしてレジに向かった。

人の役に立ちお礼を言われるのは悪くない。
そう思いながら外に出たが、耳に響く蝉の声と暑さがその気分をすぐに消し去った。
それから適当にカフェでご飯を食べながらコンビニで買った雑誌を読む。
雑誌の中で地元の古い神社がパワースポットとして紹介されているのに気がついた。
どうせこの後にやることもないし、散歩がてらそこに行くことにした。

神社の前に着くと僕は目を疑った。
そこには立派な赤い鳥居が立っていた。
雑誌に紹介されるだけあり、何人か参拝者が行き交っている。
本殿にお賽銭を入れると僕は手を叩いて目を閉じた。
特に願うことはない。僕はあまりこういうことは信じないタイプだ。

「あら、またあなた」

聞き覚えのある声がした。
そこにはまたお婆ちゃんが立っていた。

「また会いましたね。」
僕はそう言うと笑顔を見せた。
お婆ちゃんはコンビニで買った雑誌をまだ手に持っている。
まだ孫には渡してないようだ。

「毎週ここに来てるのよ。ここで願いをして帰るの」
お婆ちゃんは僕に笑顔を返した。
「何をお願いしたの?」
お婆ちゃんが聞いてきた。
「健康に生きれますようにって」
僕は適当に言った。
「どこか悪いの?ここの神社は病気を治してくれるって有名だから来たの?」
そのことは全く知らなかった。雑誌ではパワースポットという文字と地図しか見ていなかった。
「いえ、ただ健康に生きたいって思ったんですよ。」
するとお婆ちゃんは深く頷いた。適当に言っただけなのに。
流れでお婆ちゃんにも何をお願いしたのか聞いてみようかと思った時、お婆ちゃんが僕の手を強く握ってきた。そして目をじっと見つめて言った。
「健康は大事よ。私は孫が交通事故にあってね、ずっと眠ったままなの。ここには早く目が覚めて元気な顔が見れますようにってお願いしてるの。」
僕は自分が恥ずかしくなった。お婆ちゃんのお孫さんをバカにしていた自分がバカだったと思った。お婆ちゃんはきっと孫が元気になるように自分では読まない孫の好きな雑誌を買っていたのだ。僕はそんなことも知らずに適当に健康をお願いしたと言ったことも悔やんだ。

その次の週から僕は時々神社に行っては、お婆ちゃんのことを考え、「お孫さんが早く目覚めますように」と本気でお願いをするようになった。

【こんな感じで】

人の行動の背景は自分の想像もつかないことってよくありますよね。
今回は完結する話にしました。

音声で聞かれたい方はこちら↓

読んでいただきありがとうございました。

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